インスタマーケで売上3倍! 成功の秘訣は、トレンドタグとライブ配信の活用にあり

Category:インタビュー

株式会社f.f.b 木村 麗 氏

サザビーリーグ、シップス、ビームスを始めとし、数々のファッションブランドや企業を対象に、インスタグラムを活用したマーケティング(以下、インスタマーケ)指導にあたる。
「インスタグラムのライブ配信だけで数億円売り上げているファッションブランドもある」(木村氏)など、企業が効果的にインスタグラム活用をする事例を多く知る木村氏に、インスタマーケ成功の秘訣と今日から企業が取り入れられるポイントを教えてもらいました。
 
 
 
ランキング圏外から全国2位へ
 
カタリベ: 現在有名ファッションブランドを中心に、さまざまな企業にインスタマーケの指導をされていますが、今の仕事に至るまでの経緯を教えてください。
 
木村様: f.f.bは8年前に、一般の方に商品を身につけてもらいその画像データをECサイトと紐づける、「WEAR」(※ZOZOテクノロジーズが運営するファッションコーディネートアプリ)のようなサービスを始めました。写真のノウハウを本格的に学び始めたのはこの頃からです。その後位置情報を活用し、洋服の写真から販売店舗に誘導するアプリをリリース。参画ブランドを開拓し、ブランドから新作が出るたびにお店に行き商品写真を撮影するようになりました。
 
全部で200ほどのブランドを扱っていたので、撮影にかけられる時間は1ブランドあたり10分程度しかなく、この時にインスタマーケで重要な、いかに短時間でクオリティの高い写真を撮影するかという技術を身につけました。
 
そうしているうちに、参画ブランドの一社であるシップスさんから、「○○店舗のブログで使いたいので写真をもらえないか」と言われ画像データをお渡しするようになったんです。すると、それまで全国の月間売上ランキングで圏外だったその店舗が、なんとトップ10にランクイン。
 
これを機に、撮影方法を教えてほしいと依頼をいただき1〜2ヶ月指導を続けた結果、ついに全国2位になりました。
 
これはビジネスとして成立するのではと可能性を感じ、シップスさんのように撮影で困っていそうなクライアントを探し指導を始めているうちにインスタグラムが流行り、今に至ります。
 
カタリベ: それはすごい成果ですね。ご自身ではどうして木村さんの写真が売り上げに貢献したと分析していますか?
 
木村様: 一つは私自身、写真に対してこだわりがないからだと思います。企業アカウントの場合、”映える写真”を撮るには、担当者の主観やこだわりよりも、どうやってブランドの持ち味を生かすかの方が重要になります。
 
よく企業さんからは、インスタグラムの担当者はオシャレな人が向いていますか? 一眼レフ経験者の方がいいですか? と質問をいただくことがありますが、実は全く関係ありません。
 
逆にこだわりが強いと、その人の色が出すぎてせっかく築き上げたブランドの世界観から離れてしまうことがあります。
特にインスタグラムは写真を通じてブランドイメージを表現する場なので、世界観の統一は気をつけたいポイントです。
 

企業向けセミナーも多くこなす木村氏

 

狙うはビッグワードよりもトレンドタグ
 
カタリベ: まだインスタマーケに取り組めていない、もしくは、取り組んでいるもののうまくいっていない企業も多いと思います。木村さんは、どうして企業はインスタマーケに力を入れるべきだとお考えですか?
 
木村様: インスタグラムを積極的に利用する世代は、「リアル」に価値を見出すんですね。そのため以前のように、雑誌やテレビを通じたマスマーケティングが響かなくなってきています。自分ごと化しにくいからかもしれません。
 
その意味でインスタグラムはすごく身近でリアルな世界です。今日お昼に行くカフェでさえインスタグラムで探す世代なので、インスタグラムを効果的に活用できれば、集客や新規顧客開拓に大きく貢献します。
 
また今はShopNowという機能があり、インスタグラムから自社ECサイトへの誘導も可能です。「リアリティがあり宣伝臭がしない」とユーザーが感じるインスタグラムからの誘導はすごく自然な導線なので、EC事業者にとっては欠かせないツールだと考えています。
 
カタリベ: 多くの企業がインスタグラムを使うと、その分競合も増えることになると思います。どうやったら効果的にインスタグラムを使って集客や新規開拓につなげられるのでしょうか?
 
木村様: ユーザーの多くは、「タグ検索」から新規のアカウントに出合います。タグは一つの投稿につき全部で30個までつけられます。ポイントは、いかに「トレンドタグ」をつけられるか
インスタグラム内に「タグ」カテゴリがあり、ここからトレンドタグを探していきます。
今ですと、「秋ファッション」が該当します。
 
また「秋ファッション」の下に関連タグがありここにも検索頻度の高いタグが並ぶので、こうしたトレンドタグをどんどん活用していきます。
もう一つのポイントとして、「日本語のタグ」をつけることも重要です。やはり日本人は日本語で検索することが多いからです。投稿時間は「ゴールデンタイム」と言われている20時〜21時がベストです。

 

 

トレンドタグ・関連タグ例

 

ライブ配信で売上3倍。数億円単位の事例も
 
カタリベ: インスタグラムのなかでもストーリー(※24時間で投稿が消える機能)は特に人気があります。効果的な使い方があれば教えください。
 
木村様: 通常の投稿が9枚の写真でブランドの世界観を表現する場だとしたら、ストーリーは、タイムリーかつ気軽に発信する場になります。ストーリーを通じた新規流入も期待できるので、更新頻度は多ければ多い方が良いです。
 
特にオススメしたいのが、ライブ配信。ECサイトを運営している事業者ですと、ライブ配信をやるかやらないかで、売り上げが1.5〜3倍程度変わってきます。特に週の後半(水曜日〜金曜日)、20時以降は視聴ユーザーが多いのでこのタイミングでライブ配信を行うようにします。
 
事前に「この日にライブ配信をします」と告知したり、ファンが一定層ついているスタッフが配信する場合には、「何時から○○さんが配信します」とより具体的なアナウンスをしておくと、さらに視聴率アップが期待できます。
 
またファッションの場合は、身長の異なるスタッフ複数人で紹介するとよりイメージがつきやすくなるので、こちらもオススメです。ライブ配信だけで、数億円規模を売り上げているファッションECサイトもあるほどです。
 

インスタライブ配信例

 
 
カタリベ: 他にもオススメのストーリー活用法はありますか?
 
木村様: 質問機能やアンケート機能を使うのも良いと思います。通常の投稿と違い、ストーリーではコメントしてもアカウント名が表示されないので、ユーザーが気軽にアクションしやすいというメリットがあります。なので実は、「こういう商品を作って欲しい」「この色が可愛い」といった要望が多く送られてくるんです。
 
あるブランドはストーリーのアンケート・質問機能で集めた結果を元に妊婦さん向けの商品を開発し販売したところ、大ヒットしました。
あまり知られていませんが、ストーリーで投稿したものをハイライトとして残しておける機能があり、それら一つひとつに表紙をつけることができます。このハイライトは、ファーストインプレッションとして視界に飛び込んでくるので、表紙がオシャレかオシャレじゃないかによって、フォロワー数が大きく変わってきます。ぜひブランドの世界観に合った表紙をつけてみてください。

 

 

 

ハイライト機能に表紙をつけているインスタアカウント例

 
 
カタリベ: 最後に、インスタマーケを成功するためにここだけは抑えてほしいというポイントがあれば教えてください。
 
木村様: 冒頭と重複しますが、一つは写真をベースとするインスタグラムの場合、特に企業アカウントは、いかにブランドの世界観を出せるかが重要になってくるので、担当者個人の色が出過ぎる投稿にならないよう気をつけていただきたいです。担当者は一人よりも複数人いた方が、常に客観的な視点でアカウントを運用していけるので良いと思います。
 
またこれはよくクライアントにもお伝えしているのですが、インスタグラムを成功させるための秘訣は、いかに写真のストックを持っておけるか。
 
9枚の写真で世界観を表現する場なので、できれば1ヶ月分ほどストックがあると、どういう見せ方ができるか考えながら更新しやすいので良いですね。
 
手持ちの画像がなければ、「こういう写真を撮ろう」というアイディアでも十分です。ECや店頭での販売タイミングに合わせてどんな写真を掲載するか、計画性を持って更新していけると良いと思います。
 
 
取材・文:公文紫都
写真:木村麗氏提供