コンテンツは消費者に届いているか? カタリベ×明治大学が挑むウェブ上の消費行動分析

Category:イベントレポート

左:明治大学商学部小林一教授、右:カタリベ永瀬義将

 

 

明治大学商学部と産学連携授業を開始
 
企業のコンテンツマーケティングを支援するカタリベが、新たなプロジェクトを発足させた。明治大学商学部の小林一教授、小林ゼミ所属の学生らと共に「ウェブ上の消費行動に関する調査」を分析・考察する、いわゆる“産学連携授業”を開始した。
カタリベ永瀬義将社長によると、「明日のマーケティング業界を担う大学生たちと、意見や研究結果を報告・共有する場を設け、ミレニアル世代、Z世代の感覚や価値観を積極的に取り入れていく」ことを目指す。

授業の題材となる調査は、全国15才以上1000人を対象に「ウェブ上のコンテンツ(記事や動画等)が消費行動に与える影響」について訊いたものだ。
興味関心が高いコンテンツ(表1参照)や情報取得の時間、場所、メディア、そしてスマホでの購買等の実態に迫っている。
 
ウェブコンテンツの情報伝達プロセスを明らかにすることで、その背景にある消費者の情報選択の動機や価値基準が浮かび上がってくる。
学生たちは、これまで学んだマーケティングメソッドやケーススタディを応用し、客観的な分析と主観的な“気づき”をアウトプットし、カタリベとシェアしていく。
 

表1:「美容」について興味関心の高い記事はどれか?

 

課題は実践的なプレスリリース作成

学生に与えられた課題は、単なる分析にとどまらず、「調査結果を分析・考察した上で、プレスリリースを作成する」といったものになっている。これはいわゆる「調査リリース」というマーケティングPR手法で、この一端を疑似経験することになる。

先の調査は10分野の記事コンテンツに対して興味関心の高い消費者を対象としており、そのうち学生たちが取り組む調査テーマとして選定されたのは、「美容」「車・ホビー・ガジェット」「旅行・レジャー・ホテル」「投資・資産運用」「出産・育児・教育」の5分野だ。学生は、それぞれ自分が最も興味を持てる分野を選び、各々課題に取り組む。

 

授業に取り組む学生

 
 
なお今回の共同研究授業には、「スマホマーケティングを支援するカタリベの社員になったつもりで、(5分野の)企業マーケターの目に留まるようなプレスリリースを書く」という条件も設けている。研究という学業の範囲におさまらず、現在進行形の“生きたデータ”を使用して社会と直にコミュニケーションを取るという目的を実践するためだ。条件を前提に、「自分が得意とする分野は何か」「どうすれば分析結果が上手く伝わるか」など、実戦さながら、教室で真剣にテーマ選びに臨む学生の姿勢やまなざしが印象的だった。

「大学の授業、特にゼミナールというのは、今流行の言葉を使えば、アクティブ・ラーニングを実践する場です。以前から、授業では現実の企業の事例を扱ったケースブックを使用して学習を進めてきましたが、文字になったものは当然、過去の出来事に限定されてしまいます。今回のコラボレーション授業は、現在進行形の企業の事例に接することのできる貴重な機会を学生に提供してくれるでしょう。その成果に、今からとても期待しています」(小林教授)
 

研究者・新世代との交流がもたらすサービスの質向上
 
共同研究授業は10月28日に正式にスタートした。授業初日のオリエンテーションでは、プロジェクトの背景や取り組む課題のレクチャー、そして小林教授と永瀬社長によるパネルディスカッションも行われた。

小林教授によるマーケティングの時代的変遷やトレンドに関する解説が行われ、長らく主張されている「One to Oneマーケティング」の可能性が、顧客により良い購買体験を提供するための「カスタマージャーニー」というコンセプトで現在語られ、またオフラインとオンラインの融合を目指す「オムニチャネル」の定義と実践など、いずれもこれから課題分析に取り組む学生らにとって示唆に富む内容となった。

また解説は、デジタル技術の発展が著しい中国市場におけるマーケティングの変化にまで及んだ。それらはいずれも、新聞やメディアに登場する頻度が増えている、話題のキーワードだ。産学連携による共同研究授業のオリエンテーションにふさわしい、マクロな経済状況、また世界の“今”を知ることができる貴重な解説となった。
 

カタリベ永瀬義将社長

 
 
「マーケッターの視点のみならず、有識者の学術的見解や様々な世代の一般的見解と共に視野を拡げることが、社内のナレッジ蓄積の糧となると感じています。教授を始めとした有識者の見識、また学生たちの生の意見に直接触れられる共同研究授業は、我々のサービスの質を向上させる上でもとても大きな意義を持つと思います」(永瀬社長)

オリエンテーション終盤のパネルディスカッションでは、「マーケティングとは何か」という、基本的な題材を中心に深みのある意見交換や質疑応答が行われた。大学など研究現場で培われた理論と、実際のマーケティング現場のリアルな経験・ノウハウがせめぎ合うディカッションは、参加者全員にとって大きな刺激的になった。

他者とのコミュニケーションを通じて、自らの経験や想像力の外側にある新しい考え方や価値観を学ぶ――。そう当初、カタリベが共同研究授業の実施に寄せた想いが、教室で少しずつ現実になるようだった。
 
 

学生の皆さんと集合写真

 
 
※本インタビューは、カタリベが独自取材したオリジナルコンテンツです。また、先ごろ創刊されたマーケティング情報マガジン『Contents Innovation(コンテンツイノベーション)』にも掲載されております。
 
■マーケティングマガジン『Contents Innovation』について
旧態依然の広告宣伝やPRが効かなくなった現在、企業が消費者と向き合う手段として「コンテンツ」に注目が集まっています。マーケティングマガジン『Contents Innovation』は、独自の企業文化や哲学を背景にコンテンツを生み出す企業や、SNS上の消費者動向に詳しい専門家にインタビューを敢行し、コンテンツマーケティング実践企業の“いま”に迫ります。
 
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